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ヘルニア外来inguinal hernia

「足の付け根が膨れたり、引っ込んだりする」
「歩いていると、だんだん足の付け根が痛くなる」

そんな悩み、ありませんか?

ここ数か月、数年前から膨れるようになり、痛みはないので放っておいたが、だんだん膨らみが大きくなって心配している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その原因は「鼠経ヘルニア」かもしれません。
いわゆる「脱腸」です。

鼠経ヘルニアはどんな病気?

お腹の壁には、血管や神経が通るための穴が開いているところや、壁が薄いところがあります。
加齢に伴って組織が弱くなると、そのような場所から臓器が脱出することがあります。
脱出する臓器は小腸や大腸、大網(お腹の中の脂肪)などがあり、これらが脱出したり、戻ったりをくりかえす状態を「ヘルニア」といいます。
足の付け根で発生することが多く、その中でもっとも多いのが「鼠経ヘルニア」です。

鼠経ヘルニアの原因として、高齢、るいそう、腹圧のかかる仕事や運動、ヘルニアの既往・家族歴、前立腺全的術の既往、慢性的な咳、腹膜透析、喫煙などが指摘されています。
予防方法はなく、適度な運動と禁煙が発生率低下に有用とされています。1)

国際ガイドライン 2)によると、一生のうちに鼠径部ヘルニアが発症する確率は男性で27 – 43%, 女性で3 – 6%で、男性に多い疾患です。3)
およそ3人に1人は症状がありませんが 4)、様子をみているうちに痛みがでてきたりして、結局5年間のうちに約70%の方は手術を受けることになる、と言われています。5)
臓器が脱出したまま、お腹の中に戻らなくなってしまうこともあり、この状態を「陥頓」といいます。
陥頓すると、痛みが強く、脱出した臓器への血が通わなくなることで壊死してしまうことがあるので注意が必要です。

治療方法は?

治療方法は手術だけです。
リハビリや薬では治りません。
手術の方法は、「鼠径部切開法」と、「腹腔鏡下手術」があります。

鼠径部切開法では、足の付け根の皮膚を5cmほど切開してヘルニアの出口をメッシュで覆うことで臓器が脱出しないようにします。
以前はヘルニアの出口を直接縫って閉じる方法が主流でしたが、再発率が高いことが問題でした。
メッシュを使うことで、再発率は約1%まで下がりました。6)
鼠径部切開法は腰椎麻酔といって、腰からの麻酔で臍あたりから下の痛みが感じなくなる麻酔方法で手術ができます。
持病があって全身麻酔だと負担が大きい方でも受けていただけるところがメリットです。

腹腔鏡下手術では、臍を含めた3か所に穴をあけてお腹の中の様子をカメラで見ながら手術を行います。
お腹の内側からヘルニアの出口をメッシュで覆い、臓器が脱出しないようにします。
お腹の中から観察するので、一度の手術でヘルニアになりうる部位を左右ともみることができます。
膨らんでいない方にも穴が開いている場合は、同時に両側の穴を塞げるところがメリットです。

鼠径部切開法と腹腔鏡下手術はどちらがいいの?

今では、再発率はどちらも同じと言われています。2,7)
術後の痛みや回復のスピード、慢性疼痛に関しては、腹腔鏡下手術の方が勝っています。8)
両側の鼠経ヘルニアに対しては腹腔鏡下手術が推奨されます。
一方で、放射線治療やお腹の中の手術をしていて癒着が予想される場合や、腹膜透析をしている場合は鼠径部切開法が良さそうです。
それぞれの方法のメリット・デメリットを考えて選ぶことが大切です。
男性の片側のヘルニアがもっとも多いですが、この場合は腹腔鏡下手術が推奨されており、当院でもデメリットが上回らない限り、腹腔鏡下手術を提案しております。

足の付け根が膨らんでいることに気が付いたときは、驚いたことかと思います。
実はよくある病気で、手術でヘルニアの穴を塞ぐことで治せるのです。
痛みがなく、脱出した臓器が簡単に戻る場合は大急ぎで手術をする必要はありません。
しかし、ヘルニアの脱出する大きさがだんだん大きくなると、手術の侵襲が大きくなってしまうこと、陥頓のリスクがあることを考えると、早めに対処した方が良いです。
まずは、病院を受診してみてはいかがでしょうか。

参考文献

  1. 日本ヘルニア学会 ガイドライン委員会 編. 鼠経ヘルニア診療ガイドライン 金原出版.
  2. HerniaSurge Group. International guidelines for groin hernia management. Hernia. 2018; 22:1-165.
  3. Kingsnorth A, LeBlanc K. Hernias: inguinal and incisional. Lancet. 2003; 362:1561-71.
  4. Hair A, Paterson C, Wright D, et al. What effect does the duration of an inguinal hernia have on patient symptoms? J Am Coll Surg. 2001; 193:125-9.
  5. Fitzgibbons RJ Jr, Ramanan B, Arya S, et al. Long-term results of a randomized controlled trial of a nonoperative strategy (watchful waiting) for men with minimally symptomatic inguinal hernias. Ann Surg. 2013; 258:508-15.
  6. Eklund AS, Montgomery AK, Rasmussen IC, et al. Low recurrence rate after laparoscopic (TEP) and open (Lichtenstein) inguinal hernia repair: a randomized, multicenter trial with 5-year follow-up. Ann Surg. 2009; 249:33-8.
  7. Bittner R, Arregui ME, Bisgaard T, et al. Guidelines for laparoscopic (TAPP) and endoscopic (TEP) treatment of inguinal hernia [International Endohernia Society (IEHS)]. Surg Endosc. 2011; 25:2773-843.
  8. Schmedt CG, Sauerland S, Bittner R. Comparison of endoscopic procedures vs Lichtenstein and other open mesh techniques for inguinal hernia repair: a meta-analysis of randomized controlled trials. Surg Endosc. 2005; 19:188-99.

 

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